ハナムグリのように

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祇園祭の由来 疫病のこと

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相変わらずのサボりぐせで2ヶ月ぶりの更新になる。

 

この二ヶ月間で僕自身の変化はさほどないけれど、周知の通り世間は大きく変化している。その原因はもちろん新型のコロナウイルスだ。

 

ネットでニュースを遡ってみると、2ヶ月前といえば新型肺炎患者が乗船した大型クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号が横浜港に停泊するとかしないとかで揉めていた頃。それはあくまでも中国武漢での感染症であって、それが日本に入ってきたら恐ろしいなぁ、なんて悠長に考えていた頃。でも現在(4月17日)ではどうだろう。新型コロナウイルスの感染拡大は中国にだけに留まらず、世界中がコロナパニックに陥っている。ウイルスは対岸の火事ではなかった。まぁ、それは当然のことだったのかもしれない。世界は僕が思っているよりも密接に繋がっているし、そもそも日本の港にいるんだから対岸の火事な訳がない。

イギリスの首相が感染し、ハリウッドスターや有名スポーツ選手が感染し、日本では志村けんが命を落としてしまった。イタリアやスペイン、アメリカNYでは都市封鎖が行われて、4月17日現在、全世界で200万人が感染し、13万人を超える人が亡くなっている。日本でも連日500名を超える人が感染して、既に7つの都府県に出されていた緊急事態宣言を政府は全国に拡大すると発表した。この状況がいつまで続くのか、そして経済や文化にどれほどの影響を及ぼすのかについて、誰も明確な答えが出せないまま感染者数は増え続けている。

文字にしてみるとまるで映画のような話だけれど、これら全ては紛れもない事実。ピークがいつかもわからない。来週はもっと多くの感染者が出ているかもしれないし、あるいは感染が終息に向かっていると、どこかの偉い人が宣言するかもしれない。それは誰にもわからない。「不安」の一言では表せない不思議な感覚を毎日味わっている。

 

 

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話は変わるけれど、僕は山車(だし)祭りを観に行くのが好きで、数えてみると昨年は17の山車祭りを観に行っていた。我ながらよく行ったと思う。

一応説明しておくと、山車というのは祭礼の時に出てくる出し物で、簡単に言ってしまえば車輪のついている神輿のことだ。神輿が担ぐのに対して山車は車輪がついているから曳くことができる。だから山車の出る祭りを「曳き山祭り」と呼ぶ地域もある。僕の住む愛知県は全国的に見ても山車祭りが多い地域で、小さい祭りも含めれば県内だけでもなんと150ほどの山車祭りがあるそうだ。ユネスコ無形文化遺産に登録されている33の山車祭りの実に3分の1は東海3県に集中している。(どうして僕が山車祭りが好きかということについては、またの機会に書くことが出来ればと思う。)

で、この山車祭りなのだけど、今春はコロナの影響でことごとく中止に追い込まれている。まぁ、男たちが密に重なり合って、大きく掛け声を発しながら山車を曳くのだから、それが屋外だといえ中止になるのは当然かもしれない。札幌の雪まつりですらクラスターが発生したのだから、山車祭の危険度はその上をいくはずだ。

なんてことを考えていて、ふと思い出したことがある。それは祇園祭のこと。

祇園祭といえば京都を代表する、そして日本の山車祭り代表する一大イベントで、7月1日から一ヶ月にわたって行われる夏の京都の風物詩だ。僕も昨年見に行ったけれど、市中を練り歩く山鉾の大きさと数には本当に圧倒される。今年はコロナの影響で春の祭りがほぼ全滅状態になってしまい、このままいけば当然夏の祭りも開催が危ぶまれるはずで、特に祇園祭のように全国から人が集まるような祭りは開催したとしても規模が縮小される可能性が高い。でも、あれ?と思う。祇園祭ってそもそも疫病を鎮めるのが目的じゃなかったっけ?

気になってWikipediaを見てみるとやっぱりそうだった。祇園祭はそもそも疫病の流行によって御霊会が行われたのが始まりだった。もう1000年以上も前の話。京都の高温多湿な土地柄が、急激な人口増加や上下水道の不備によって、マラリア天然痘、インフルエンザなど様々な疫病を流行らせる要因となってしまった。もちろん当時はウイルスだ細菌だなんて知識はないから、流行の原因は疫神というスピリチュアルな存在になってくる。その疫神を鎮めるために始まった祭りが祇園祭だった。

 

なんだか皮肉な話だなと思う。疫病を鎮めるために始まった祭りが、疫病のために中止になるのかもしれないのだから。当時の人に言わせたら「今年こそ祭を開催しろよ!」ってなるのだろうけれど、もちろんそうはいかない。というか、もしタイムスリップできるのなら是非とも教えてあげたい。「祭なんて逆効果だよ、3密のうち2密を満たしてるよ!」って。1200年という月日の長さをひしひしと感じる。

残念だけれど、今年祇園祭の通常開催はきっと難しくなる。あの雄大な山鉾を見ることはできないかもしれない。ただ、祭の開催が無理だったとしても、来年は疫病で亡くなった人を悼む祭りとして、あの雄大な山鉾巡業を見ることを願ってる。そうやって受け継がれてってくれたらと思う。