周期ゼミの話

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夕方、土の湿った匂いがどこからか漂ってきて、案の定、雨。
この町では何日ぶりかの、いや、たぶん何週間ぶりかの雨が降る。
連日の猛暑のこともあって「恵みの雨」と言いたいところだけれど、そう言ってしまうことにどこか不謹慎な気持ちを抱かずにはいられない、そんな平成最後の夏。

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それにしても暑い。
今日でこそ気温は下がったものの、この街では連日のように38℃だ39℃だと猛暑が続いて、天気予報をみると沖縄よりも随分と暑い。なんだそれ。暑すぎて蚊も飛んでない。
蚊は飛んでないけれど、セミはうだるような暑さの中、ジージジと鳴き続けてる。土の中で溜まりに溜まった思いの丈をぶつけるように鳴いている。うるさい。
(ちなみにセミの鳴き声を「ジージジ」と表現したけれど、僕の住む名古屋市にはミンミンゼミは生息していない。ミンミンゼミが生息するには暑すぎるらしい。だから市内にいる限り「ミーンミン」という鳴き声は聞けない。)

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そういえば以前、周期ゼミがどうして一定の周期、それも素数で大量発生するのか、といったネットの記事を読んだことがある。
アメリカに生息する周期ゼミ(13年ごと17年ごとといった素数周期で大量発生するセミ)が12年や16年では無く素数である13年や17年の周期になったのは、素数の最小公倍数が理由だという記事。


キーになるのは最小公倍数の大きさ。素数の最小公倍数は他の数の最小公倍数に比べると大きいことがセミの周期を決定した要因だという。例えば12と14の最小公倍数は84。つまり12年周期のセミと14年周期のセミが次に交雑できるのは84年後ということになる。それに対して13年周期と14年周期だと182年後、17年周期と18年周期だと306年後といったように、素数周期で発生するセミは他の周期のセミと交雑する機会が圧倒的に少ない。そして素数以外のセミはいろんな周期のセミと出会うことができる。それはまるでいい事のようにも思えるけれど、実際は違う周期のセミが交雑してしまうと生まれてくる子供の周期が乱れてしまい、発生した年に個体数が少なく交雑できないなんて事も起きてしまうという。それに比べると、他の周期ゼミと交雑せずに13年周期17周期の同じ周期で子孫を残していった素数ゼミは確実に個体数を増やすことができる。これが何十万年、何百万年と繰り返されることによって、現在では素数周期のセミだけが生き残ることとなった、という記事。


数学的で面白い話だな、と思うと同時に、こんなことを人間が頭をひねって考えているのに、当のセミたちはそんなこと知る由もないというのはなんだか可笑しい。
セミからしたら自分が素数年で発生している事実どころか、その17年間、街からセミが姿を消してることも知らない。幼虫だって自分が17年も地中にいる意識なんて無いだろうし、卵を産んだ親だって子供が17年も土の中にいるなんて思ってない。そもそも卵が孵化する前に死んでしまう。子供の成長どころか我が子を目にすることすらない。
人間は時間軸で物事を考えるけれど、セミは永遠のような土の中と刹那の地上を生きるだけで、そこに時間なんてない。瞬間と永遠。そこに人間の時間軸を入れ込んで考えるのは、セミからしたら滑稽に見えてしまうかもしれない。