ハナムグリのように

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大麻の話 ①

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プラハにて

 

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大麻を吸ってみたい。

なんて言っているとヤバい人だと思われるんだろうか。先日カナダで大麻が全面解禁されたこともあって、ニュースでも今までタブー視されていた大麻トークを耳にすることが多いから、もう問題発言と思う人も少ないかもしれない。でもどうなんだろう。わからないけれど僕は割と口にする。大麻吸ってみたい。

 

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とは言え、日本の法律ではまだ大麻は違法薬物だから僕は吸わないし、吸う気もないし、そもそも手に入れる方法も知らない。大麻が持つ人体へ害がアルコールやタバコよりもずっと低くて、それがカフェイン程度だという研究結果が出ていても、それが違法である限り吸わないと思う。

ただ、どうして今でも違法薬物なのかは気になるし、盲目的に「法律で決まってるからダメなものはダメなんだよ」とか「わざわざ気持ち良くなる物を解禁しなくてもいい」とか言う人への若干の違和感も感じている。

ということで最近大麻について色々とネットで検索している。パソコンの検索履歴だけ見たらなかなか危ない人だけれど、それでも大麻の歴史や大麻が規制されてきた流れを調べるのは面白い。偏りこそあるものの、まるで近代史の授業みたいだ。

 

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それにしても僕たちは大麻について詳しいことを知らない。

違法薬物だし大麻解禁を議論することもタブーとされてるから当然と言えば当然なのか。でも、かつて日本人は大麻と非常に密接な関係を築いていた。

神道では大麻(おおぬさ)や注連縄(しめなわ)などなど様々な神具に使用されてきたし、戦前までは教科書でも栽培方法が記載されていたほどで、麻は日本において重要な産業だった。1940年には農林省が麻の流通を統制する一元機関を設立したほどだ。大麻はとても身近な存在だった。それは国外においても同様で、19世紀までは世界にある繊維の3分の1は麻だったという。

それが大きく変化したのが20世紀に入ってから。日本では敗戦後の1948年、日本を占領統治したGHQが強制的に押し付けた大麻取締法の制定がターニングポイントで、それ以降大麻=麻薬といった認識が広まることになる。つまり大麻を悪とする考え方は70年前に突如として植え付けられた倫理観ってわけだ。

ちなみにそれまで日本では大麻は繊維素材や喘息の薬であって、吸引して気持ち良くなるなんて発想はなかった。それでもアメリカは大麻を吸引する事はもとより、栽培や所持も徹底的に処罰の対象とした。結果として日本の大麻産業は壊滅し、麻製品は姿を消すことになった。(日本で麻として流通している繊維のほとんどはリネンであって本来の大麻ではない)

 

ではどうしてそこまでしてアメリカは大麻取締法を制定させたのか。

それを考えるにはまずアメリカでの大麻の取り扱いを整理していく必要がある。

 

まず大麻の前に少し禁酒法の話。

アメリカでは1920年から1933年まで現代では悪法として名高い禁酒法が施行されていた。禁酒法を推し進めていたのは規律を重んじる敬虔なキリスト教保守派で、禁酒法は彼らのクリスチャニティーの押し付け的なものだった訳だけど、結局非合法な酒が出回ることによってギャングを巨大化させてしまい、あっけなく1933年に廃止となる。

そしてその4年後の1937年、アメリカの連邦法で大麻が違法とされる。アメリカ政府は『リーファー・マッドネス 麻薬中毒者の狂気』(1936年)という映画を作るなどして反マリファナキャンペーンを大々的に開始するのだけど、その目的の一つには禁酒法が廃止されたことによって仕事を失った警官に仕事を与える必要があったからだという(ほんとか?)

でも、さらに大事な理由は別にある。それは移民問題。当時のアメリカには安価な労働力としてメキシコ移民が増えていて、それがアメリカの雇用を不安定にしていた。メキシコ人は大麻をよく吸っていたから、大麻を規制することでメキシコ人を捕まえ排斥するという目的があった。大麻の取り締まりが禁酒法の代替と考えると、いかにもアメリカの保守系白人が考えそうな方法だ。実際、少量の所持でも終身刑になっていたというから白人の人種差別意識って怖い。

 

そんなこんなで10年後、第二次世界大戦も終わって日本を占領統治したGHQは自身のキリスト教的価値観、そして人種差別的偏見からくる大麻取締法を半ば強引に制定する。駐留するアメリカ兵がその辺に自生している大麻を吸わないためにも大麻取締法は早急に制定されたらしい。そして日本の麻産業は壊滅する。

 

さらにここで見え隠れしてくるのが石油利権の問題だ。

 

20世紀は石油の時代だと言われることがある。麻に替わってポリエステルやナイロンといった石油から作られる化学繊維が主流になって、さらに石油からはプラスチックが作られ、そこから数々の環境問題も生まれた。僕たちが飲んでいる西洋薬品もほとんどが石油から作られた化学合成品だし(知らなかった)、言わずもがな石油は数多の戦争を引き起こしてきた。間違いなく20世紀は石油に振り回されている。

そんな石油、石油業界が恐れているのが大麻なんだという。大麻は栽培も簡単で繊維として優れている上に、あまり知られていないけれどプラスチックを作ることもできる。もちろん天然由来だから環境に優しい。さらに医療大麻アルツハイマーうつ病、癲癇や気管支喘息など約250種類の疾患に効果があるとされる万能薬だ。そんな万能な大麻が石油に取って代わることを防ぐために、石油業界は圧力をかける。その結果として多くの国では大麻=麻薬の認識が定着して、日本をはじめとする多くの国で大麻は違法なまま、栽培や研究すらさせてもらえないのが現状だ。ってこれはどこまで本当の話なんだろう。

ちなみに史上最大の資産を持つ男と言われている石油王のジョン・ロックフェラー(-1937)はキリスト教保守派のバプテスト信者で、酒もタバコも嗜まなかったんだそう。きっと大麻も嫌いだったんだろうな。

 

石油業界の圧力もあって規制されてきた大麻だけれど、60年代に入るとリベラルな若者、つまりヒッピーの間で大麻は広がり始める。

ベトナム戦争反対を訴え、愛と平和を掲げる反体制的な若者を取り締まる目的で「War on Drugs」の名の下に大麻撲滅に乗り出したのが時のニクソン大統領。国にとって目障りな分子を大麻で取り締まるって、やってることが30年前と変わらないのが凄い。ただここで誤算が生まれる。

ニクソン大統領は大麻がいかに有害なのかという裏付けを得るために「マリファナ及び薬物乱用に関する全米委員会」(シーファ委員会)を開催したのだけれど、委員会が出した最終報告は「大麻の使用は、暴力的であれ、非暴力的であれ、犯罪の源とはならず、犯罪と関係することもない」というものだった。大誤算。ニクソン大統領は意に反した結果報告を受け取らなかったという。まるで子供。

 

それから40年近くが経った現在、アメリカではワシントン州をはじめとするいくつかの州で嗜好品としての大麻が合法になっている。その背景には税収源の確保や、麻薬カルテルの資金源を絶つ目的があるけれど、それって本当に禁酒法みたいだなと思う。歴史に学べてない。

 

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ちなみにこれはネットから拾った画像だけれど、左が大麻の解禁状況で真ん中が政党の勢力図、左がオピオイド鎮痛剤(オピオイド - Wikipedia)の処方箋発行数。比べてみると非常に似通っているのがわかる。トランプ支持の地域は保守的でキリスト福音派も多いから大麻の解禁が遅れてるわけだけれど、これを現在アメリカで大きな問題になっているオピオイド問題と絡めて考えると凄く興味深い。

オピオイドに苦しんで違法ドラッグに手を出してしまっている人ほど、本当は医療大麻や合法大麻救われる可能性があるのに

合法大麻は米国をオピオイド危機から救うか? 研究が可能性を示唆 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

そんな人(低賃金の労働者が多い)が住んでいる地域ほど保守的でトランプ大好きで大麻が解禁されてないという現状。なんとも世の中はうまくできてない。

 

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と、長々書いてしまったけれど、これってどこまで本当の話なのかよくわからない。石油業界の陰謀論とか。全部ネット情報だ。

でも大麻(そしてアメリカ)って本当に面白いなぁ。大麻を軸にアメリカの近代史を学ぶカリキュラムが組めそうな気がする。

 

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いや、違う、実は今日書きたかったことって本当はこんな話じゃない。

ただ今回は長くなってしまったから、続きはまた今度書こう。