ハナムグリのように

日々のあわ 思ったこと、聴いた音楽や読んだ本のことなどを

改めてベトナム旅行

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いくつもの景色が流れて随分とこじんまりした駅に着いたところで、ホームの端に雪が集められているのを見つける。
この辺りではもう雪が降ったのかと思うと同時に、そんな天気予報見たかなとも思う。いや、そもそも天気予報なんてあまり注意して見ていないから、僕が知らないだけで雪が降ったのは周知の事実なのかもしれない。それにもう年末だ。雪ぐらい降っていても不思議じゃない。大抵のことは僕の知らない場所で当たり前のように起こっている。そんなもんだ。

大阪までは在来線で二時間半。決して近くはないけれど金額面では新幹線の半分で済むし、それに自分には時間がたっぷりある。浮いたお金でてっちり鍋を食べよう。そんなことを考えながら電車に揺られる。好きなバンドのライブを観て美味しいものを食べて観光して、そうだな、後は何をしようか。相も変わらず気ままに生きてる。師走というその言葉の由来すら滑稽に思えるくらい自由気ままに。

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NHK BSで放送されている「世界ふれあい街歩き」(毎週録画して見ている数少ない番組のひとつ)のベトナムハノイ編で ‘剥がれた靴底を貼り直すための接着剤’ だけを売っているおじさんが出てきて、そんなコアな商売がどうして成立するのかと不思議に思っていたけれど、実際ベトナムを旅行してみるとその商売が成り立つのもわかる気がする。
ベトナムでは4〜10月までが雨季で、僕が行った11月でも突然スコールが降ることがあるような気候だ。だから雨で足元が悪いのは当然の事、そもそも綺麗に舗装されている道も少なく、基本的に悪路だから靴への負担はものすごく大きい。一日中街を歩いているとスニーカーを履いていても足が痛くなって、底もすり減ってしまう。この街で暮らしていたら靴底が剥がれるのも時間の問題だろうな、と。
こういう事は現地へ行って初めて痛感すること。こんな発見の積み重ねが旅行を楽しくする。

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結局ベトナム旅行について何も書いてなかったからその話を少し。


訪れたのはホーチミンハノイベトナム二大都市。それぞれの街をひたすら歩いて一番感じたことはこの国はなんて ‘ちぐはぐ’ なんだろうということだ。
これはもしかしたらベトナムに限ったことではなくて、いわゆる第三世界と言われる発展途上国の殆どに当てはまることかもしれないけれど、入れ物と中身が違うような違和感をどこかに感じてしまう。現代的な部分とそこで暮らす人たちの気質の違いというか、国民性とのズレみたいなもの。
例えば、舶来の高級ブランドが店を構えているビルのすぐ脇の路上で、民族帽(ノンラー)を被ったおばさんが紛い物の財布を売っていたりするあの感じ。例えば、信号もあって時折警官が立って交通整理もされているのに、前にブログでも書いた通りでみんな交通ルールを守らない、歩道を追い越し車線として使うスクーターが多すぎて嫌になってしまうあの感じ。例えば、ボロボロのアパートの中の一室に突如とてもお洒落なカフェが現れたりする、あの感じ。ベトナムはここ数年で目覚ましい経済成長を見せているらしいけれど、やっぱりそこには変わっていく社会と、そこに適応しきれない国民性というのがある。いや、むしろ適応しようなんて思っていないようにも感じられる。それはもしかしたら、ベトナムが歩んできた歴史が影響しているのかもしれない。

話は少し逸れるけれど、ベトナム人のイメージってどんなだろう。日本人のように農耕文化だから温厚で控えめ?いやいや、実はそんなことはない。プライドは高いし声は大きいし、ガツガツくるし思ったより好戦的だし、悪い意味でなく、とても強か。自分をしっかり貫く感じ。
この事実は意外ではあったけれど、ベトナムの歴史を考えれば、そりゃそうだろうなとも思う。
ベトナムの歴史はそのまま独立戦争の歴史と言い換えることもできる。多くの人の頭に浮かぶのはベトナム戦争だろうけれど、それより以前からベトナムはずっと戦ってきた。本当に、ずっと前から。
紀元前より中国(漢)に支配されて、その間に幾度となく反乱は起こしたもの、結果1000年という長きにわたってベトナムは中国の支配下に置かれることになる。そして唐が滅んだタイミングで独立して、その後に初めての長期王朝が誕生するも15世紀にはまた中国の支配下に。1428年に解放されて以降はしばらく動乱の時代が続いて、19世紀になると今度はフランスの侵略を許し植民地になって、さらにその植民地支配がしばらく続いてからのアメリカとのベトナム戦争だ。つまりベトナムは中国と1000年、フランスと100年、アメリカと20年戦争してきた国ってわけだ。それで育まれてきた国民性が温厚なはずがない。

ベトナムは外からの文化を許しつつも、常に自分を保って虎視眈々と独立のチャンスを狙っていた国。そう簡単に外の文化には染まらないし、自国のナショナリズムというか確固たるアイデンティティーを譲らない国民性を持っている。多分それが僕の感じた ‘ちぐはぐ感’だ。
ベトナム戦争終結から40年以上が経った今でも、まるで戦後のような空気感で、ここはホーチミンではなくサイゴンなんだなと、そんなことを思ってしまう。正直、食が自分に合わなかったというのがあるものの(胃腸炎になった)、それを差し引いても興味深くて楽しい旅だった。

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あー、また旅行記っぽいものを書かなかったなー。
ホーチミンハノイの他にも陶器で有名なバッチャン村や、世界遺産として有名なハロン湾でクルージングしたー楽しかったー。(雑)