ハナムグリのように

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ベトナム旅行

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ベトナムへ行ってきた。
何か特別な目的があるわけではない純粋な観光旅行。とは言えどうしてまたベトナムに?と、それは海外旅行へ行けばどこへ行ってたとしても尋ねられる質問もされるけれど、本当に深い理由なんてなくて、強いて言うなら1,そんなに遠くなく 2,安く 3,ご飯も美味しそうだから、と言う理由。特別ベトナムに何か思い入れがあるわけではない。
と思ってふと自分の本棚を見ると松岡完著『ベトナム戦争』(中公新書)やベトナム戦争を舞台にした西島大介作『ディエンビエンフー』(小学館)が並んでいたからベトナムに、というかベトナム戦争には興味があるのかもしれないと遅ればせながら気づく。ベトナム戦争アメリカが初めて負けた戦争であり、米ソの代理戦争でもあり、長きに渡って続いたベトナム独立への最後の戦争。いろいろな見方があるけれど古典的なロックやポップスが好きな自分にとっては当時のユースカルチャーに大きく結びつき変動させた戦争というイメージが強い。

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少し古いロックやポップスが好きな人にとっては、ベトナム戦争が当時の音楽をはじめとする若者文化に与えた影響の大きさなんて今更説明の必要はないと思う。
1965年にアメリカが北爆を開始して以降、若者を中心に反戦運動が活発になってその力がフラワームーブメントやヒッピー文化といった反体制的なカウンターカルチャーを盛り上げることになった。その中で生み出された音楽はエネルギーがあり革新的で、それは現在に至るまで強い影響を与え続けている。例えばローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500の上位曲を見てみてもその殆どはベトナム戦争が泥沼化した65年から終結の75年までの約10年間で作られた曲たちだ。1位〜5位は全てこの10年で作られているし、3位のimagineや4位のwhat's going onなんかはもろに反戦歌。1位のディランだって反戦歌を歌っているし、2位のストーンズだってミックジャガー反戦デモに参加していた。おそらくこの時代、少なくともアメリカやイギリスではベトナム戦争に影響を受けてないロックミュージシャンの方が少なかったはずだ。極論だけれどベトナム戦争が無かったら現在の音楽地図はまるっきり別の物になっていたかもしれない。
でもどうしてベトナム戦争はこんなにも当時のカルチャーに影響を与えたのか。若者の心を揺り動かしたんだろうか。
思うにその答えは簡単で、それはそのタイミングで若者が多かったからだと思う。めちゃくちゃ多かった。65年から遡ること20年、1945年に第二次世界大戦終結して世界各地でベビーブームが起きた。日本ではいわゆる「団塊の世代」で47年〜49年に生まれた子供たち、アメリカでは日本より少し早くそして長く46年〜64年に生まれた子供たち。その数ざっと7820万人。この世代が60年代後半には20歳前後となって戦地へ送り込まれ血を流し、それに心を痛める同世代が詩を歌い文化を創った。街には若者が溢れていた。当時アメリカの徴兵制は18歳からで、戦争経験どころか社会経験もない未熟な若者が遥か遠いアジアの戦争に狩りだされ、自国を守るためでもなく殺し殺された。この現状が若者の心を揺り動かさないはずがなかった。結果として彼らの作る歌には魔法がかかり、カウンターカルチャーが盛り上がった。
(余談になるけれど、アメリカでは80年代にエコーベビーブームが起こって、今度はその世代がイラク戦争へ送り込まれることになる。増えた若者の職場としての戦争。アメリカの構造が垣間見える。)
それにしても、これはどことなく皮肉な話にも思えてしまう。戦争によって生み出された世代が戦争を否定する詩を歌い、かつ戦争の駒となる。戦争とロックミュージックの切っても切り離せない関係。ロックミュージックの多くは戦争を否定するけれど、そのロックミュージックの生まれた背景に戦争があることも事実。生みの親への憎悪。スターウォーズの構図だ。
そういえばジョージルーカスが映画製作を始めたのは北爆が始まった1965年。数年後、大学生の頃から温めていたある企画をフランシスフォードコッポラにノンクレジットで譲り渡すんだけれど、その企画というのがベトナム戦争を描いた『地獄の黙示録』。その一方でジョージルーカスはコッポラの干渉なしに『スターウォーズ』を製作したらしい。ウィキペディア情報。そう考えるとジョージルーカスもベトナム戦争の産物なのかもしれない。

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おぉ、ベトナム旅行について何一つ書いてない‥

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What's Going on / Marvin Gaye

What's Going on

What's Going on

知らないとただのお洒落なソウルミュージック。でも実はがっつり反戦歌。


地獄の黙示録 / フランシス・フォード・コッポラ


劇中にストーンズの (I Can' t Get No) Satisfactionが流れる。「満足できない どれだけやっても どれだけやっても満足できないんだ」と歌うこの歌詞が、軍事介入して泥沼化していったベトナム戦争、そしてそこに送り込まれた若い兵士の気持ちを言い得ている気がする。