ハナムグリのように

日々のあわ 思ったこと、聴いた音楽や読んだ本のことなどを

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新しい三枚の下着を買ったら、すぐに古い三枚の下着を捨てる。
そんな当然のことが、当たり前のように出来る人間にならなければいけない。自分は。

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起床。 夏。 インスタントコーヒー。

テレビでは連日の猛暑と、それによる熱中症関連のニュース。僕の地元では6日連続で猛暑日だったという。緯度で言うなら今住んでいる街の方が南ではあるけれど、それでも地元に比べたら断然涼しいことがこの街に住んでいる事で生まれる唯一と言っていいくらいの利点。朝晩にはちゃんと気温も下がるのでクーラーもまだ点けていない。猛暑のニュースがまるで他人事に聞こえる。それに梅雨明けが早かった事や、職場までが徒歩5分で一日中屋内での仕事という事もあって、心がまだ夏になりきれていないような感覚。いつものように曖昧な季節の変わり目。

出勤。いつもと変わりなくダラダラと仕事。いつもと変わりなく先輩社員と無駄話。テレビでジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」が放送してたんで久しぶりに観たんですけれど最後の10分くらいで号泣しちゃって、と話したら不思議な顔をされて、あれって泣く映画なの?と訊かれる。どうなんだろう。あれは泣く映画じゃないのか。確かに子供の頃に何度も観たけれど一度も泣かなかった。大人になると涙腺が緩むってこういう事なのか。よく分からないけれどとりあえず、泣く映画ですよ、と答えておく。

終業。帰りにスーパーに寄って買い物。スーパーに長時間滞在すると無駄な物を買ってしまうのは何も僕だけではないはずで、その問題を解決するにはどうしたものか。何か良い方法は無いものか。と考えて最近閃いたのが、アイスクリームを最初にカゴへ入れる作戦。スーパーへ着くなりアイスクリームを買い物カゴの中に入れてしまえば溶けるのが気になって無駄使いをせずに素早く買い物が出来るという考え。ただしこれで問題なのはアイスが溶けるのを気にするあまり、必要な物まで買いそびれてしまう事。実際それで買いそびれてしまった経験があるので、今日は最後にアイスクリームをカゴの中に入れようと思っていたら、今度はアイスクリームを買うのを忘れてしまった。それに気付いたときの絶望感と言ったらない。 あぁ、アイスクリームに左右されない買い物がしたい。

帰宅。夜、久しぶりに知り合いと電話で他愛も無い無駄話。本当に意味の無い無駄話を1時間半。まるで女子だな、と思う。

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平成狸合戦ぽんぽこ / 高畑勲

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今年の夏に公開される宮崎駿5年ぶりの監督作「風立ちぬ」のキャッチコピーが「生きねば」で、同監督の「もののけ姫」ではキャッチコピーが「生きろ」。その流れで言うのならば高畑監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」では「生きる」がキャッチコピーとして合っている気がする。(実際は「タヌキだってがんばってるんだよォ」) 「生きねば」という強い意思でも「生きろ」という命令でもなく「生きる」というただの写実。もちろんタヌキを主人公にした映画なのでコピーの中に「タヌキ」を入れるのは正解だと思うけれど、この映画の根本的なところを表現するにはシンプルに「生きる」が合っている。僕がコピーを書いてと頼まれたらきっとそうする。

同じジブリでも宮崎駿作品が若干説教臭いのに対して、この高畑監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」は対人間の構図を前面に出しているにも関わらず思いのほかあっさりとして説教じみていない。それはストーリーが三人称のナレーションで進行していくことが大きな要因で、しかもそのナレーションでは取り立てて人間を悪とするでもなく、だからと言って擁護するでもなく淡々と落語調に事実を伝えていくだけのもの。人間と戦う狸の日々を伝えているだけ。春が来て恋をして子供の誕生、生活を困難にする様々な問題、思わぬ災難、人間との戦い、仲間の死、それらを伝えるだけのナレーションで、だからどうだって話にはならない。まるでドキュメンタリーのような映画だ。エンディングで「‘どっこい生きる’という言葉は狸の為にあるようなもの」というナレーションが入るけれど、恐らくこの映画の本質はどっこい生きてる狸を描いた、それ以上のものではないんじゃないかと思う。そして、それがこの映画の素敵なところでもある。

観た事は無いけれど、60年くらい前に「どっこい生きてる」という邦画があった。貧困との戦いや一家に降り掛かる災難を描いた、イタリアンネオリアリズモの影響を強く受けた作品らしい。観た事も無いのに言ってしまうと、きっと高畑監督はこの「どっこい生きてる」みたいなことを描きたかったんじゃないかと思う。つまり「平成狸合戦ぽんぽこ」はイタリアン・ネオレアリズモ。「自転車泥棒」なんかと同じ。貧しい弱者を描き、淡々として、そして凄く切ない。

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好きな映画だけれど、自分の周りでの評判があまり良くないので、ちょっと残念。